冷蔵庫や洗濯機を買い替えたのに、当日になって「玄関から入りません」と搬入スタッフに言われる。こうした失敗は珍しくありません。原因のほとんどは、採寸のやり方そのものにあります。
採寸、どこを測れば足りるのか
本体の幅・奥行き・高さだけ測っても足りません。搬入経路のすべてを測る必要があります。
理由は単純です。家電は玄関からそのまま設置場所まで運ばれるわけではなく、廊下を通り、角を曲がり、階段やドアを抜けます。どこか一か所でも本体サイズより狭ければ、そこで止まります。必要なのは「本体サイズ」と「経路の最狭部」を比べることです。チェックすべき場所は、玄関の有効幅、廊下の幅、曲がり角での対角寸法、階段の踊り場、設置する部屋のドア幅です。
たとえば幅65cmの冷蔵庫を買った場合、玄関のドアが70cmあっても安心はできません。廊下を直角に曲がる場所があると、幅65cmの箱を回転させるために斜めの対角寸法が必要になります。実測で「曲がり角の対角が62cmしかなかった」というケースは実際にあります。これで搬入不可になります。
例外として、分解搬入ができる機種もあります。ドアを外す、脚を外すといった対応で数センチ稼げることがあります。ただし機種によっては分解できない構造のものもあるので、採寸の段階で「分解できるか」も合わせて確認しておくと安心です。
エレベーター付きマンションでも油断できない理由
エレベーターがあるから大丈夫、とは言えません。エレベーターのサイズそのものが壁になることがあります。
マンションのエレベーターには、かご内の寸法とドアの開口幅という二つの制限があります。かごが広くても、ドアの開口が狭ければ家電は入りません。さらに、かごの中で荷物を回転させるスペースが足りないと、斜めにも入らないことがあります。管理会社やマンションの資料に「エレベーター内寸」と「出入口有効幅」が書かれていることが多いので、事前に確認しておくべき項目です。
具体的な場面を挙げると、ドラム式洗濯機は奥行きが70cmを超えるものが多く、一般的なマンションのエレベーター(かご奥行き135cm前後)でも、斜めに入れる角度が確保できずに断念した例があります。この場合、階段搬入に切り替えるか、クレーンを使った窓搬入になることもあります。
迷いやすいのは「築年数の古いマンション」です。古い建物ほどエレベーターが小さい傾向にあります。新築物件の感覚で測らず、必ず現地の実寸を確認してください。管理組合に問い合わせれば、過去の搬入実績を教えてもらえることもあります。
玄関と廊下、見落としやすいのはドア枠の厚み
玄関幅を測るとき、ドアそのものの開口部だけでなく、ドア枠の厚みまで含めて測らないと誤差が出ます。
仕組みはこうです。メジャーで壁から壁までを測ると、実際にはドア枠が内側に数センチ張り出しているため、有効に使える幅はそれより狭くなります。さらに、ドアが外開きか内開きかによっても、家電を通すときの角度の取りやすさが変わります。内開きのドアは、開けた状態でドア自体が通路をふさぐことがあるため、実質的な幅がさらに狭まります。
ある家庭では、玄関の壁から壁までを測って78cmと記録していましたが、ドア枠の厚みを引くと実際の有効幅は72cmでした。幅68cmの冷蔵庫はぎりぎり通る計算でしたが、本体には取っ手やコンプレッサーの出っ張りがあり、結局数センチ足りずに玄関を一時的に外す作業が必要になりました。
ここは迷うところですが、カタログに載っている「本体幅」には取っ手や配管の出っ張りが含まれていないことがあります。型番から詳細な仕様書を確認するか、販売店に「突起物を含めた最大幅」を聞いておくと安全です。
設置スペースは「ぴったり」が一番危ない
設置場所のサイズと家電本体のサイズが同じ、あるいは数センチしか余裕がない場合、搬入は成功してもその後の使用で困ることがあります。
家電には放熱や排水のための隙間が必要です。冷蔵庫は左右と背面に数センチの空間がないと放熱効率が落ち、電気代が余分にかかったり、本体の寿命が縮んだりします。洗濯機も給排水ホースの取り回しのため、背面にある程度の空間が要ります。設置スペースを「本体がぴったり収まる広さ」で選ぶと、こうした余白がなくなってしまいます。
よくあるのは、冷蔵庫置き場の幅が70cmしかないのに、幅68cmの冷蔵庫を選んでしまうケースです。左右2cmずつしか余裕がなく、放熱用のスペースが確保できません。結果として夏場に庫内の冷えが悪くなり、電気代が想定より高くなったという相談もあります。
例外として、壁からの放熱を考慮した「前面排気タイプ」の冷蔵庫であれば、左右の隙間をほとんど取らずに設置できる機種もあります。設置スペースがどうしても狭い場合は、こうしたタイプを選ぶという回避策もあります。購入前に排気方式を確認しておくと選択の幅が広がります。
搬入経路が確保できないとき、現場はどうなるか
採寸を怠ったまま搬入日を迎えると、当日その場で「搬入不可」と判断され、家電を持ち帰られてしまうことがあります。
搬入業者は安全を最優先するため、無理に通そうとはしません。壁や家電本体を傷つけるリスクがあると判断すれば、その場で作業を中止します。そうなると、再配達の手配や、クレーン搬入・窓からの吊り上げといった特殊作業が必要になり、追加の費用と日数がかかります。特にクレーン作業は建物の立地や天候によって実施できない日もあるため、予定が大きく崩れることになります。
実際にあった場面として、5階建てマンションの最上階に冷蔵庫を搬入しようとしたところ、階段の踊り場で本体が曲がりきらず、その日は断念。後日、窓からクレーンで吊り上げる作業になり、当初の予定から一週間以上遅れて設置が完了した例があります。
迷いやすいのは「事前に伝えていたのに当日断られた」というケースです。電話で伝えた寸法と実測値に誤差があったり、家具の配置を考慮していなかったりすると、現場での判断が変わることがあります。搬入経路に不安がある場合は、写真や動画を撮って事前に業者へ送っておくと、当日のトラブルを減らせます。

